ビール職人が造り出す高品質ビール

昨今のクラフトビールムーブメントを受けて多くのクラフトビール専門店がオープンするなか、作りたての味わいが楽しめるとあって、小規模なビール醸造所（マイクロブルワリー）を併設したブルワリーパブが注目されている。

そんな中、古き良き下町の雰囲気が残る北千住駅東口に、今年の3月にオープンしたブルワリーパブがある。昔ながらの面影を残したままの商店街。その一本路地に入ったところに店を構える「さかづき Brewing」だ。オープンしたばかりだというのに連日大盛況。開店待ちのお客さんが列を作る日も少なくないのだとか。

「ビール作りは楽しいです。料理と一緒で、次これ入れてみたらどうなるかな？といった実験的要素があって。根っからの研究者なのかもしれないですね」

そう語るのは大手ビール会社で9年もの間、ビールの醸造から商品開発まで携わった経歴をもつ、醸造家兼オーナーの金山尚子さん。

「まさかこんなにビールを商売にするとは思っていませんでした。十年後自分が何をやっているかなんて本当にわからないものですね」

と金山さんは笑う。ビールとの出会いは、学生時代の大衆居酒屋でのアルバイト。店長が飲ませてくれた仕事終わりの一杯が、全てのきっかけとなった。

「ビール会社の工場では、工程管理や品質管理を行う醸造部にいました。その後は新商品開発部に異動して、今の店くらいの小さな醸造所で醸造するほか、設備のマネジメントやメンテナンスもしていました。そこで培ったノウハウが今に生きていると思います」

店内にあるガラス張りの醸造所には醸造設備がずらりと並ぶ。実はこの醸造設備、金山さんの手作りというのだから驚きだ。そんな景色を眺めながら、できたてのクラフトビールを飲めるというビール好きにはたまらない環境がそこにはある。

「同じ種類のビールを作っても味は毎回違うんです。お店を始めた当初は、お客さんに味の違いを指摘されるたびに謝っていましたが、ある時、あるお客さんが『いやいやこれが楽しいんだよ』と言ってくれたんです。会社に勤めている頃は、“全国どこでも毎日同じ味”を守るようずっと教育されてきたので、その言葉にはっとさせられたんです」

醸造家と言われると職人気質のイメージが強いが、金山さんはお客さんとの会話から醸造のヒントを得る。作り手とお客さんが直接コミュニケーションを交わせる環境こそがマイクロブルワリーの醍醐味であり、一番大事にしなければいけないことだと語る。そんな姿勢が、さかづきのおいしいビールを生んでいるのだろう。

ビールとの相性◎ 絶品料理に舌鼓

さかづきの魅力はビールだけではない。ドイツ料理店で30年以上のキャリアを持つシェフが作る豊富なフードメニューも魅力のひとつ。「おつまみからシメまで楽しめる料理」をテーマに考えられたフードメニューはどれもビールとの相性抜群！

「あけさんのドライカレー」はオープン時からの定番メニュー。甘いバナナとつんとするクローブが合わさった、まろやかでふんわりとした香りが特徴的なヴァイツェンと一緒に。

「ビアパブとか、ブルーパブはビールにフォーカスしているので、フードメニューを充実させているところって案外少ないんです。だけど、食いしん坊な私はビールも飲みたいし、おいしいごはんも食べたいなっていう思いがありました。海外と違って日本には、お酒とごはんを一緒に楽しむ独特の文化があるので、ビールだけでなく、ごはんもしっかり提供したかったんです」

平日は仕事帰りのサラリーマンやOLがメインだというが、休みの日は客層がガラリと変わって、家族連れや若いカップルで賑わうという。特に土曜の昼は、開店と同時に満席になるほどの盛況ぶりで、ビールを飲みに来る客はもちろん、食事を楽しみに訪れる客も多くいるという。ビールだけでなく、料理にもこだわったメニューづくりが幅広い層から愛されるひとつの理由なのだろう。

「今後はビール造りにフォーカスしていきたいです。お店とは別に醸造工場を持って、そこでもっと色々な種類のビール造りに挑戦していきたいです。ゆくゆくは私が醸造したビールをBtoBで色々なお店にも卸すことが目標です」

クラフトビールとの出会いは一期一会。だからこそ、訪れる度に新しい美味しさを発見できる楽しみがある。あなたも一度、魅惑のクラフトビールの世界に足を運んでみてはいかかだろうか。最高の一杯が出迎えてくれるはず。

さかづきBrewing
東京都足立区千住旭町11-10コルディアーレ1F
03-5284-9432
水～金 16:00～22:00(L.O)/土 13:00～22:00(L.O)/日13:00～21:00(L.O)
月曜・火曜定休
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