江戸時代からつづく、静岡の履き物づくり
江戸時代、駿府と呼ばれた現在の静岡には、全国からたくさんの職人が集められました。家康公の居城「駿府城」と江戸時代最初の城下町である「駿府」、そして「静岡浅間神社」を建造するためです。大工や塗師方、彫刻など、それぞれ一流の技で“新たな時代の誕生”に尽力した職人たちは、その後、木工や漆器などの工芸品を手掛けるようになります。これが、今日まで受け継がれる郷土工芸品、駿河指物や駿河漆器、駿河塗下駄などへと発展していきました。
なかでも駿河塗下駄などの“履き物”は、「静岡といえば塗下駄」といわれるほど盛んな地元産業に。この「伝統の履き物づくり」に今も新たな風を吹き込んでいるのが、静岡市葵区にある「株式会社水鳥工業」です。
下駄の常識を覆した、圧倒的な履き心地
コスチュームアーティスト・ひびのこずえとコラボレートした「ひのきのはきもの」(2005年 グッドデザインしずおか 大賞)、雪駄をモチーフにした男の下駄「茶人」(2009年 グッドデザインしずおか 奨励賞)、ウエッジヒールを採用した新しい伝統のカタチ「SHIKIBU」(2010年 東京インターナショナル・ギフト・ショー 新製品コンテスト 大賞)。
数々の受賞歴を誇る水鳥工業の履き物は、伝統的な下駄を現代にマッチさせるそのデザイン性とクオリティーの高さから、「original japanese geta mizutori」として国内外のファッションシーンから大きな注目を集めています。しかし、多くの人々を驚かせたのは、今までの下駄からは想像もできない、水鳥工業ならではの“圧倒的な履き心地の良さ”でした。
「下駄は鼻緒が食い込んで痛い」「毎年五月にある浜松祭りでは、女性が下駄で足を痛めて困っている」。そんな地元の方たちの声を聞いたのをきっかけに、履き物づくり70年の歴史をもつ老舗メーカー・水鳥工業は、『ほんとうに履き心地の良い下駄づくり』を目指すことを決心します。
それまでに培った下駄・サンダル・靴中底づくりの職人技を凝縮させ、足の甲をつつみ込む幅広い鼻緒や、左右異なる足型に合わせた人間工学的な生地づくりを開発。また静岡大学と共同で実験を行い、血流改善・浮き指の解消・歩行姿勢の改善など、水鳥の下駄がもたらす健康効果についても科学的に実証しました。このように履く人のことを一番に考えて生み出された“新しい下駄”は、「一日中履いても疲れない」「足が痛くならないから一度も脱がなかった」など、実際に履き心地を実感したお客様から瞬く間に評判が広がっていくことになりました。