株式会社BABEL LABEL(バベルレーベル)は、2013年に映画監督が集まって設立した映像プロダクションだ。平均年齢30歳の若手クリエイター30人が、テレビやウェブのCMから映画、ドラマ、ミュージックビデオまで、年間200点を超える映像コンテンツを制作する。
ホロリとさせるドキュメンタリー、思わず笑ってしまうコメディ路線、光と音楽を融合した演出――と、個性派ぞろいの監督たちによる表現の幅広さが同社の提案力につながっている。
高校生を夢中にした5分のウェブドラマ
2018年の卒業シーズン、全国の若者を夢中にしたYouTubeドラマ『恋のはじまりは放課後のチャイムから』もバベルレーベルが手がけた作品のひとつだ。
卒業まで1ヶ月を切った高校生5人の恋と友情を描いた青春ストーリーで、約1ヶ月にわたり平日16時にY!mobile(ワイモバイル)公式チャンネルで配信された。
通称『#恋チャ』で親しまれたこの作品の人気に火をつけたのがSNSを使った仕掛けだ。
登場人物それぞれがTwitterやInstagramのアカウントを持ち、まるで実在するかのようなつぶやきや写真を投稿するのだ。視聴者は、SNSを通じて彼らと24時間つながり、友達のようにコメントすることもできる。時にはそのコメントがドラマ本編の展開を左右することもある。
「ドラマなのかリアルなのか」という新感覚が評判になり、総再生回数は2700万回を突破。1話あたり約5分という気軽さも相まって、#恋チャは高校生の放課後の習慣となった。
格安スマホブランドのワイモバイルにとって、春先は契約者獲得の重要な時期。広告としても、ターゲットである学生とのエンゲージメントを高めることに成功した。
いまの時代に合わせた映像制作
同社代表取締役の山田久人さん(32歳)はこの成果について次のように振り返る。
「世の中に映像がありふれていて、工夫しないと見てもらえない時代。映像を作れるだけじゃなく、仕掛けを作っていくことが大事だと思っています」
博報堂ケトル・博報堂・AOI Pro.・AID-DCCとともに企画制作した#恋チャは、山田さんがプロデューサーとしてドラマパートを仕切り、同社所属の藤井道人さん、志真健太郎さん、原廣利さんの3人が監督として制作の指揮をとった。
「話をいただいた時点で企画の大枠は決まっていたので、われわれは予算とスケジュール、そして結果に合わせて映像のゴールを決めていきます。どんなストーリーで誰をキャスティングするかなど、すべて提案しました。それができるチームを社内に持っているから、指名していただけたんじゃないかと思います」
業界においても、世界三大広告賞のひとつ「クリオ賞(2018 CLIO AWARDS)」や日本最大級のクリエイティブアワード「ACC賞(2018 58th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS)」のシルバー賞など数々の賞を受賞し、国内外から高く評価されている。
クオリティファーストなチームづくり
ところで日本の映像プロダクションというと、お金を集めてくるプロデューサーが主体で、監督は案件に合わせて外注するというのが一般的だ。しかし山田さんは、毎回違うチーム編成では監督とプロデューサー、制作スタッフが一体となれず、能力が発揮できないと指摘する。
「われわれが目指しているのは、利益ではなくクオリティが最優先の映像集団です。そうすると全スタッフのキャプテンである監督が中心になることが大事。映像って総合芸術だと思うんで」
設立当初は映像監督集団だった同社だが、2015年に山田さんが代表になってからは、プロデューサーと進行管理をするプロダクションマネージャーを加えた「プロダクション機能」を構築。さらにデザイナーやエディターといったクリエイターを内製化し、ワンストップで映像制作ができる体制を整えた。
「ツーカーの人間関係でやっているので費用も仕事量も、余計なコストは一切カットされていると思います。社内で助け合いもしますし、逆にダメなものをしれっと流さない。言い合える関係性を大事にしています」
結果が次の仕事を呼んでくる
バベルレーベルでは、営業をしないことを営業と呼んでいる。
「営業することでいろいろ機会が増えるとは思うんですけど、条件の悪い話もあるじゃないですか。クオリティの高いものを作り続けて、それを見た方々が口コミで仕事を依頼してくださるような形が、われわれには合っているのかなと思って」
クオリティ第一主義を掲げる一方、映像制作の先にある“結果”まで見据えることが自分たちの責任であると山田さんは語る。
「映像という観点だけで言えば、感性なのでいろんな正解があります。でも広告としての結果を考えたら、正解って限られてくるんです。『誰にどう思わせたいか』、そこだけは絶対にぶれないようにしてます」
クライアントが成し遂げたい結果を一番に考え、視聴者の目線で判断をする。それがプロデューサーの役割のひとつだと山田さんは言う。
「映画やドラマといった長編ものでも結果を出せるようになってきて、最近は扱える予算の高い案件が増えています。誰かに認められて、その後もしっかりと仕事が来る。それが全てです。言い訳をしない、かっこいい集団でいたいんですよね」
お金をかけなくてもプロのクオリティ
2018年に同社は『2045株式会社』という会社を新たに設立した。映像広告に限らず、マーケティング・広報PR のプロデューサーが予算に応じてベストなプロモーションを一緒に考える。
「お金をかけなくてもやれることはいっぱいあります」と10万円レベルのものから提案可能としながらも、制作面で妥協はしないと山田さんは再び強調する。
「ちゃんと作って、ちゃんと見てもらえれば、人の心は動かせると思います。ところが今は、チープなものが本当に増えています。これでは世の中の人は『このレベルでいいんだ』と思ってしまう」
誰でもコンテンツを作り発信できる時代に、バベルレーベルはプロとして「ダサいものを作ったらブランディングとしておしまい」を合言葉に作品を作り続ける。
「クライアントさんにもチープなものでは世に出せないと思わせないと。そのためにも僕らは、毎回結果を更新する気持ちで挑んでいます」
これから彼らがどんな切り口で私たちを楽しませてくれるのか、目が離せない。
株式会社BABEL LABEL
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