夢を語れるコワーキングスペース RYOZAN PARK大塚のコミュニティ型支援とは

夢を語れるコワーキングスペース RYOZAN PARK大塚のコミュニティ型支援とは

池袋と巣鴨に挟まれた東京都豊島区大塚エリアは、かつて花街として栄え、いまも昔ながらの個人商店が軒を連ねる。一方で2018年に星野リゾートの都市観光ホテル『OMO 5 東京大塚』が開業するなど、この街に新しい“人の流れを生み出す拠点”が注目されている。

その先駆的な存在なのが、2015年にオープンした『RYOZAN PARK大塚』(以下、RZP大塚)だ。ここでは多種多様な人々がワークスペースを共有しながら、「拡大家族」のように関係を深めている。

仕事場も子育てもシェアするオフィス

JR大塚駅から徒歩約3分のところにあるRZP大塚は、7階建てビルの5~7階と屋上の4フロアを使用した会員制コワーキングスペース。巣鴨でシェアハウス&オフィスを経営する竹沢徳剛さん(37歳)が、仕事と子育てを両立できる場としてオープンさせた。

「共働きの家族には支援が本当に必要で、子育ての苦労や喜びをコミュニティでシェアしていければいいなと」(竹沢さん)

最上階は認可外保育園『RYOZAN PARK PRESCHOOL』が併設されており、現在22人の園児うち9人の親がRZP大塚をワークスペースにしている会員だ。同じフロアで仕事をしたり、ランチタイムを子供と過ごすことができる。毎週木曜日には、園児と全フロアの会員が一緒にカレーを楽しむイベントを開催している。

「ここは子供の成長を見逃したくない親の気持ちを叶えられる場所。働く親や大人の姿が見えるのは子供にとってもいい刺激になります」(竹沢さん)

同園のもうひとつの特長が多国籍スタッフによる100パーセント英語保育が受けられるということ。竹沢さんの妻で、スコットランド出身のレイチェルさんが「先行き不透明な時代、世界中どこに行っても生きていけるように」という想いで主宰し、本物の英語と多様性を育む環境を用意した。子供たちの国籍もバラエティに富んでいて、区外から通う親子がいるほどの人気ぶりだ。

個性的なオフィススペース

大人たちがいるワークスペースもまた刺激的だ。5階には個室オフィスが11室、6階には60席のフリーアドレス型オフィスが広がる。会員の職業・職種はさまざまで、外国人や一般企業に勤めながらリモートワークの拠点にしている会社員も少なくない。

「入居時の面談は保育園のある7階で行います。子供を間近に、『彼らが立派に国を支えていけるよう俺も頑張ろう』と思える起業家は最高。20代の男性会員が『子供っていいな。結婚しようかな』ってつぶやいたりするんですよ」(竹沢さん)

6階のフリーアドレス型オフィスは間仕切りがなく、壁面の絵画や革張りのソファが海外のブティックホテルのような雰囲気をかもし出している。会議室やラウンジスペース、リラックススペース、集中ブースもあって、気分転換の場所には事欠かない。

しかしRZP大塚の魅力は、交通の便や施設だけではない。そこに集う人たちをつなぎ、コミュニティを支えるスタッフの存在が肝なのだ。

コミュニティを育むオフタイム

「いろんなつながりを持っていて、出会いをどんどん作ってくれる人」と竹沢さんが紹介するのは、インキュベーションマネージャーの中島明さん。マーケッターや人材コンサルタントを経て、コミュニティ構築・運営を専門にしたプロデューサーに転身。全国各地のローカルコミュニティをはじめ、ジャンルを問わずさまざまなプロジェクト・イベントの活性化に尽力してきた人物だ。

「自宅やカフェでも仕事はできるけど、切磋琢磨できる仲間がいる拠点を持てるのがメリット。でも、黙っていてもコミュニティはできません。お互いに知り合える機会だとか、それぞれのスキルを可視化させたりして、コミュニティの血流が良くなるように働きかけているんです」(中島さん)

RZP大塚ではBBQや餅つき、運動会、独身者パーティー、起業家交流会など楽しそうなイベントが年中行われている。家族連れや一般参加できるものも多く、いつも活気と出会いにあふれている。

「僕との1対1の面談よりも、各分野に強い人とつながっちゃったほうが早いこともあるんで。手を変え品を変え、集まりやすい場を作っているっていう感じです」(中島さん)

こうした積み重ねにより、今では会員同士でビジネスのやりとりが自然発生的に行われるように。デザイナーやエンジニア、弁護士、会計士、建築家、個人投資家、脚本家――RZPのように、こんなにも多彩な人材がすぐそばにいる環境はそうそうないだろう。

コミュニティマネージャーの浦長瀬紳吾さんによれば、運営にすすんで協力してくれる会員が多いとか。かくいう浦長瀬さんも会員のひとり。親しみやすい人柄が会員内で評判になりスカウトされた。彼自身も「本業に通ずる学び」があると感じて兼業を決めたそう。

「会員はお客さんというより一緒に場を作る仲間。一緒にご飯を食べたり、オフの時間を一緒に過ごしているのが大きいですね」(浦長瀬さん)

街ぐるみで若者をインキュベート

RYOZAN PARK(リョーザン・パーク)という名前は、中国の歴史小説『水滸伝(すいこでん)』に登場する地名“梁山泊(りょうざんぱく)”にあやかっている。ここを本拠地にしたはみ出し者たちが活躍したことから、すぐれた野心家が集まる場所をいうようになった。

現在、RZP大塚には100人以上の会員がいて、個室オフィスはつねに入居待ち。竹沢さんは混雑緩和と利用満足度の向上のため、巣鴨に2つのフリーアドレス型オフィスを新設した。施設をまたいだ会員の交流を積極的に仕掛けていく考えだ。

「知り合いが多い街ほど特別な場所になり、人は定着していく。たとえ会社が大きくなってここを卒業しても、この界隈にオフィスを構えてくれれば一つの生態系ができてきますよね」(中島さん)

さらに竹沢さんたちが取り組んでいるのが、会員が活躍できるステージを街に作ることだ。直近では大塚の街中をアートで彩る『O2K ART PROJECT(大塚アートプロジェクト)』に参画。大塚駅北口前の工事現場の仮囲いをキャンバスに、RZPの会員でありアーティストの鈴木掌さんがライブペイントを行った。

「オフィスの中だけでインキュベートするんじゃなくて、街全体で志のある若者を応援する機運を高めたいと思ってるんです」(竹沢さん)

オフィスを飛び出し、街を巻き込んで成長を続けるRZPは、今後どのようなコミュニティを目指していくのか。

「コミュニティって生き物だから、完成系はないんです。自分の成長に合わせて仲間を増やし、家族のように付き合っていく。僕たちがおじいちゃんになれば老人ホームが欲しくなるかもしれない。合言葉は『目指せ、ゆりかごから墓場まで』です」(竹沢さん)

RYOZAN PARK大塚
東京都豊島区南大塚3-36-7 T&Tビル 5階・6階・7階 map
https://www.ryozanpark.com/